• カレンダー

    09 | 2017/10 | 11
    1 2 3 4 5 6 7
    8 9 10 11 12 13 14
    15 16 17 18 19 20 21
    22 23 24 25 26 27 28
    29 30 31 - - - -

  • プロフィール

    モッサン

    Author:モッサン
    タイトルは夏目漱石『草枕』の一節。ここは、本業である研究以外の日頃の活動、出会った人々、読んだ本、見た映画などなどをご紹介するブログです。

  • 検索フォーム


2008/08/18(Mon)

ワタルへの手紙:『ブレイブ・ストーリー』その2

 気づけば8月の半ば。蝉時雨が収まる気配はまだない。





 さて、『ブレイブ・ストーリー』中・下巻を読了。

 映画化もされた有名な小説なので、改めて説明するまでもないかもしれないが、主人公は小学5年生の少年ワタル。幸せに暮らしていたワタルとその家族。その幸せが父の別離によって突然崩れてしまう。ワタルは、失った幸せを取り戻すべく、運命を一つだけ変えることができるという女神に会うため、「要御扉」を通り「幻界」へと旅立つ。女神に会うには過酷な試練を乗越えなければならない。物語は、ワタルが仲間と一緒に数々の試練を乗越え、成長していく姿を描いている。

 宮部みゆきの小説は、去年の終わりに『楽園(上・下巻)』を読んだことがあるだけ。『楽園』では、夫婦や親子に関する愛憎の書き方が、緻密で良いなーと思っていたが、『ブレイブ・ストーリー』でも、その点がお見事。ワタルが「真実の鏡」を使って入院中の母のもとへやって来る場面は、涙なしでは読めなかった。

 また、この本に書かれている「運命」と「仲間」に関しては、共感できる。その辺を手紙風にまとめてみた。



ワタルへ

 最初あれほど頼りなかった君の成長に、とても勇気づけられた。
思わず「頼りない」と言ってしまったが、君はまだ小学5年生。むしろ、父との突然の別離、母の自殺未遂という重く辛い経験を受け止めるには、11歳という君の年齢は幼過ぎたのだ。

 それでも、君は、お母さんがガス自殺を図ったのをきっかけに、「幻界」への旅を決意した。自分の運命を変えるために。かつての幸せな家族を取り戻すために。母親への思慕の情や愛情だけでは、とてもできない決断だ。見知らぬ世界へ飛び込むことは、多くの勇気を必要とすることだからだ。ましてや、一般的な小学5年生といえば、まだまだ父親や母親に甘え守られている年頃だ。今思えば、「幻界」への旅を決意した時から、君の成長は始まっていたのだ。

 でも、ワタル。君の旅の目的は、最終的に大きく変わった。上にも書いたが、初めのうち君は女神に、お父さんとの別離を止めてもらおうと考えていた。それが、失った家族の幸せを取り戻すことになると考えたからだ。でも、最後に「運命の塔」に登った君が女神に頼んだのは、「幻界」を救うことだった。願いを変えた理由を、君は、たとえ元の運命が変わっても、自分が変わらなければ、同じ運命を繰り返すことになるからだと説明している。

 告白しよう。君の説明を聞いた時、私は何となく居たたまれない気持ちになってしまった。そもそも、人は辛い現実ほど簡単には受け入れられない。少なくとも、私は辛い現実を受け入れるのが苦手だ。だから、あの時、あーしていればなー、と思うことばかりである。でも君の言う通り、たとえ過去が変わったとしても、自分が変わっていなければ、別の時に同じ過ちが繰り返されるだろう。どうも私は、君を見習わなければいけないようだ。
 

 ところで、ワタル。君の旅した「幻界」は、さぞかし美しいところだったろう。地平線まで続く草原、砂漠、霧に包まれた森や沼。現実の世界では見られないような動物たち。クリスタルパレスのような建物は、この世には存在しないだろう。

 しかし、「幻界」は単に美しいだけの場所ではなかった。君の旅は危険に満ちていた。「幻界」の美しさに見惚れる間もなく、君を次々に危機が見舞った。君一人では、そうした危機を乗り越えることはできなかっただろう。

 でも、君には素敵な仲間がいた。明るく陽気なキ・キーマ、優しいミーナ、そして、厳しいが本当は優しいカッツ。君の周りには、いつも手助けしてくれる誰かがいた。彼らがいたからこそ、君はいくつもの危機を切り抜け、運命の塔にたどり着くことができたのだ。




 仲間が手助けしてくれたということは、君に力がないことを意味しているのではない。最後の戦いに敗れたミツルが君に問いかけた、「何がいけなかったんだ? 俺はどこで間違ったんだろう?」。君は答えた。「僕には仲間たちがいてくれた。・・・だけどミツルは一人だったね」と。君の言うとおり、ミツルには時に励まし、時には厳しく諌めてくれる仲間がいなかった。それがミツルを誤った道へと招くこととなったのだ。逆に、ミツルに比べれば相当頼りなかった君が、最後の戦いに勝つことができたのは、君が正しい道から外れないよう、仲間が支えてくれたからだ。そういう意味で、恐らく仲間がいるということ自体が、君の力だったのだだろう。

 ただ、ワタル。君の言葉は、ミツルにだけ当てはまるのではない。
 恐らく誰もが、仲間は大切であるということを知っている。でも、気がつくと仲間を信用できなくなって、疑心暗鬼に陥っていることが、誰にでもあるのだ。仲間は単に優しい言葉だけではなく、時に厳しい時もあれば、激しく叱咤するものだということを忘れてしまうのだろう。

 それに、仲間を持つということは、辛いことでもある。カッツが死んだ時、君はひどく悲しんでいたから、それが分かるだろう。

 また、仲間を持つということは、仲間に対してありのままの自分をさらけ出すことでもある。弱さも含めて自分をさらけ出すということは、やはり辛いことで勇気を必要とすることだと思う。その勇気が君にはあったが、誰もがその勇気を持っているわけではない。

 仲間を持つということは、意外と難しいものなのだ。君の言葉は"それにもかかわらず"仲間は大切だと訴えるかけてくる。だから、君の言葉は、ミツルにだけ当てはまるのではない。誰にでも当てはまる言葉なのだ。


 最後に、「幻界」を救った君は、旅立つ以前と比べて相当変わった。君の考え、君の言葉が徐々に変わっていったことに、君自身気づいていただろうか。旅が始まったばかりの頃は、君の頼りなさが、君の言葉の端々に表れていたものだ。だが、旅が終わる頃、君の言葉は、まるで大人だった。そんな所にも君の成長が現れていたのだ。
 君を見ていて、私もちょっとは勇気が持てるようになった気がする?少なくとも勇気づけられた。君の旅は、まさに「勇気の物語」であった。

 ワタル。ありがとう。



Home | Category : 読書 |  コメントアイコン Comment0  |  Trackback2

トラックバック ▼


  • ブレイブ・ストーリー / 宮部みゆき

    ブレイブ・ストーリー(上)宮部 みゆき角川書店 このアイテムの詳細を見る ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)宮部 みゆき角川書店 このアイテムの詳細を見る ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)宮部 みゆき角川書店 このアイテムの詳細を見る 先日、宮部みゆきさんの蒲生邸事件を貸してくれた知人から、ブレイブ・ストーリーも借りていたのですが、読み終わりました。 あらすじは、 十年に一度だけ開く“要御扉(かなめのみとびら)”を通り、“幻界(ヴィジョン)”へと、自分の運命を変えようと強く心に願 ...

  • 秋田県 - ペニーオークション

    あなたが欲しかったあの商品を手に入れる最大のチャンス! ...

コメント ▼

    

画像の文字を半角数字で下記ボックスに記入ください。
文字が読みにくい場合はブラウザの更新をすると新しい文字列が表示されます。

Home Home | Top Top
  1. 無料アクセス解析