恋愛作家シートン!?
画像は小菊。近所にて撮影。この寒さでは、そろそろ菊の時期も終わりだろうか。

さて、以前シートン動物記『愛犬ビンゴ』の感想を書いたが(→詳しくはこちら)、先日、同じシリーズの『狼王ロボ』(集英社)を読んだ。

今回の巻は、「狼王ロボ」、「灰色グマの伝記」、「カンガルーネズミ」、「サンドヒルの雄ジカ」の4つの短編から構成されている。
中でも特に面白かったのが「狼王ロボ」。灰色狼ロボとシートンが知恵比べするという物語である。
狼というと、どうしても恐ろしい動物という印象がある。実際、この物語に登場するロボも、人間を襲うことはないものの、野生の動物だけでなく、牧場の牛や羊などの家畜を殺しては、ニュー・メキシコ州コランポー平原の牧場主達を怒らせている。莫大な懸賞金が賭けられるほどの厄介者だ。
ロボを捕まえようと、銃を携えたハンター達が何度も捕獲を試みるが、ずば抜けた嗅覚と身体能力を持つロボは、難なくこの危機を切り抜ける。ハンターが引き連れてきた猟犬たちは、容赦なく残忍な返り討ちにあってしまう。トラバサミや毒などの罠をしかけても、冷静なロボはいとも簡単にそれを見抜き、糞尿をひっかけてハンターを馬鹿にするしまつ。頭も良いのだ。
いかにも憎らし気な狼王だが、物語が終わった時には、私はすっかりロボが好きになっていた。彼の情愛の深さを見せ付けられたからである。
ロボには白狼のブランカという一匹の妻がいる。物語のクライマックスで、ブランカが捕獲され殺されたことが、彼の冷静さを奪い、結果として彼を罠に陥れてしまう。妻に対する愛情が、完全無欠な狼王の仇となってしまったわけである。ロボが、殺された妻を捜し狂ったように一晩中森や平原をり回っては遠吠えをする描写は、読んでいて痛ましくなるほどだ。愛する者を失った悲しみで心が乱れていく様は、いかにも人間的である。
捕われたロボは、結局殺されるのではなく、妻を失った悲しみの余り死んでしまう。まるで、シェークスピアばりの恋愛悲劇を読んでいるような結末であった。
ちなみに、狼は一夫一婦制を取る動物で、一度ツガイになると、相手を換えることはめったにないそうだ。私は長いこと実家で犬を飼っているので(→詳しくはこちら)、忠犬ハチ公など幾多の例を挙げられなくとも、犬がどれだけ愛情深い動物であるかを知っているつもりだ。愛情の深さは狼も同じらしい。
前回読んだ『愛犬ビンゴ』の銀ギツネもそうだったが、動物記を読んでいると、ツガイ同士の愛情が意外なほど豊かで深いことに驚かされる。下手な恋愛小説などよりも、よほど心揺さぶられてしまう。動物の感情を人間が正確に理解するには限界があり、ツガイ同士の愛情といっても、当然、そこにはシートンの主観的な解釈や擬人化された表現も含まれている。しかし読んでいて心揺さぶられるのは紛れも無い事実。動物の愛情表現に対するシートンの描写は、恋愛作家のように巧みであるといえるだろう。
メキシコ狼:ロボはこの種類の狼だそうだ。

(画像:Wikipedia)
ついでに・・・:実家にいる狼の子孫。愛犬ゴン。


